■ 内容証明とは
一般に内容証明といわれていますが,正式な名称は,内容証明郵便です。
これは,郵便法63条に基づく制度で,差出人が同文の内容文書を3通(正本1通,謄本2通)作成し,正本を相手方(受取人)に,謄本は郵便局と差出人がそれぞれ保管します。
これにより,その内容と出した日が郵便事業株式会社(郵便局)によって証明されるため,権利義務の得失や変更に閑する重要な通知をする場合には,普通の手紙よりはるかに大きな証拠能力を得ることができます。
もっとも,この内容証明郵便だけでは,配達日時を証明することはできませんので,郵便物の配達した年月日を証明してくれる 配達証明 (郵便法62条)をセットで依頼します。
この配達証明は,書留郵便物について認められるもので,配達した日を記したハガキを後日送ってくれる制度です。
根拠法
郵便事業株式会社法3条1項1号(業務の範囲)
会社(郵便事業株式会社)は,その目的を達成するため,次に掲げる業務を営むものとする。
1 郵便法(昭和22年法律第165号)の規定により行う郵便の業務
郵便法63条(内容証明)
内容証明の取扱いにおいては,会社において,当該郵便物の内容たる文書の内容を証明する。
同法62条(配達証明)
配達証明の取扱いにおいては,会社において,当該郵便物を配達し,又は交付した事実を証明する。
■ 内容証明郵便の機能
内容証明郵便には,次の2つの機能があります。
(1) 相手方にどのような内容の信書をいつ出したかを証明できる(証拠保全的機能)
(2) 相手方に何らかの心理的強制を与えることができる(心理的理強機能)
(1) 内容証明郵便の日付は,公正証書などの日付とともに,確定日付 として通用します(民法施行法5条五号)。
ですから,例えば,契約解除の意思表示を内容証明郵便でしておくと裁判上完全な証拠力を認められ,契約解除の意思表示をいつしたかが裁判上争いとなるときには,その証明が容易になります。
(2) 内容証明郵便は,わざわざ公の機関である郵便局に立ち会ってもらって届ける信書です。
ですから,相手方に差出人の請求は本気であることを知らしめることができます。ただし,この機能は事実上のものにすぎず,法律上のものではありませんから,内容証明郵便を出したただけで問題が解決するわけではありません。
また,内容証明郵便を出すということは,相手方に対する宣戦布告となり,後戻りできない橋をわたることになりますので,このあたりを十分に認識された上で,内容証明郵便を利用される必要があります。
■ 内容証明郵便の利用
(1) 内容証明郵便にすべき場合
例えば,債権譲渡の通知など,確定日付のある証書による通知が必要な場合です。
(2) 内容証明郵便にした方がよい場合
次のような場合があります。
@ 将来その内容が争われると予想されるような場合
・契約解除の通知
・時効の中断
・時効の援用
・売買予約完結の通知
・賃貸借契約更新拒絶の通知
・債権放棄の通知
・保証人に対する保証確認の通知
・解雇予告手当の請求 など
A 通知の日付が重要な意味を持つ場合
・抵当権実行の通知
・クーリング・オフの通知 など
(3) その他利用できる場合
心理的に庄力をかけたり,相手の出方をうかがうなど,副次的な効果を利用する場合です。
・貸金や売掛金の請求
・債権回収の通知
・損害賠償の請求
・ハラスメント,ストカーに対する警告 など
★ 最近の取扱事案から 泣く相続人
かつて,「笑う相続人」が出現するのをなるべく少なくし,相続関係を迅速に処理するために,兄弟姉妹の代襲相続は一代限りとする民法改正がありましたが(昭和55年法51号),逆の法現象を体験しましたので紹介します。
事案は,2年ほど前に亡くなられた長兄様が連帯保証人となられていた会社がこのほど倒産したため,信用保証協会の委託を受けた債権回収会社が戸籍調査をしたところ,「相続人は貴殿(相談者:次男)を含む3人の弟様であられることが判明した。すでに死亡の日から2年近く経過しているところから,法定単純承認の事態になっているものと思われるが,念のため相続放棄申述受理証明書所持の有無を確認する。本書到達後1週間以内に連絡なき場合には,下記求償債についての督促手続を開始する。」という債権回収会社からの内容証明郵便に関するものでした。
相談者(76歳)は,この内容証明文書をもって,ある法律事務所に相談に行かれたところ,長兄様の保証債務の額が高額であることもあって着手金ン十万円といわれたようで,「国民年金で何とか生活している身であり,そんな大金は払えないし,亡兄はもちろん2人の弟ともこの30年近く連絡が途絶えていた。兄が死んだのは風の便りで聴いてはいたが,どこで死んだのか,弟達が今どこに住んでいるのかもわからない。どうすべきか。」というものでした。
以下は,相談者との会話の要旨です。
「長兄様は結婚されていましたか?」
「してたよ。」
「子供さんは?」
「いたよ。」
「なるほどね。じゃ,子供さんが相続を放棄されたか,子供さんが亡くなっていたようですが,そのことは知っていましたか?」
「そんなことは知らないよ。」
「あなたは今からでもバッチリ相続を放棄することができます。」
「そうか。ホッとしたよ。」
「内容証明には内容証明で返しましょうか。」
「いくら?」
「そうですね。高額だからいつもは3万円もらっているけど,いい勉強させてもらったから,5,000円でいいですよ。あと郵便局に1,220円かかります。」
「えっ,それでいいの。」
「それじゃ,ちょっと待っててくださいね。すぐに仕上げますから。」
「できましたよ。これで債権回収会社の方はひとまず一件落着ですが,きちんと家庭裁判所に相続放棄の申述をしなければいけませんね。」
「どうすりゃいいの。」
「まず,2人の弟様と連絡を取り合う必要があります。」
「そんなこといわれても,弟達の住所もわからないのに..。」
「市区町村役場で戸籍や住民票を追っかけるのですよ。今回の債権回収会社もそうしたんですよ。」
「だからこんもんが来たんだ。」
「そのとおり! でも,手間暇かかりますので,この内容証明郵便が先方に届いた頃をみはからって,担当者に昵懇してみてください。先方も本件は早期に処理したいはずですから,きちんと事情を説明されたら,長兄様の死亡地や弟様方の住所も教えてくれるかもしれせんよ。」
:
そのとおりの結果となり,お三方の相続放棄の申述も受理されました(よかった)。
■ 内容証明郵便を利用すべきでない場合
内容証明郵便は問題解決の万能薬ではありませんし,前述しましたように,これを出すと相手方に対する宣戦布告となり,後戻りにできない状態をもたらします。
次のような場合には一方的な通知である内容証明郵便ではなく,他の手段で対処された方がよいでしょう。
- 相手方に誠意がみられるとき
例えば,借金の返済期限の猶予を申し出たような場合には,内証証明郵便ではなく,双方で話し合って債務弁済契約などを締結された方がよいでしょう(それで時効も中断します)。
- 相手方とのつきあい関係を維持しなければならないとき
親戚の人,近隣の人,長年の友人,職場の同僚や上司などとは,つきあい関係を維持しなければなりませんから,イキナリ内容証明郵便ではなく,できるだけ話し合いでの解決を目指されるべきです。
- 自分にも落ち度があるとき
このようなときは,内容証明郵便を出すとヤブヘビになってしまいます。内容証明郵便は相手方の証拠にもなるものだからです。
- 相手方が倒産しそうなとき
このようなときに,貸金の返還請求を内容証明郵便ですると,相手方は財産を隠したり処分したりしてしまうのがオチですから,裁判所に仮差押えなどを申し立てられるべきです。
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