行政書士試験合格アシスト T 平成18年試験の分析
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 平成18年試験の概要

 ご案内のように,行政書士試験は平成18年度から大きく変わりました。今年の試験の合格を目指す者としては,昨年度の試験を今一度チェックして,仕上げに入ることにしましょう。
 平成18年度の行政書士試験は,11月12日,全国60の会場で実施されました(試験時間は従前より30分延長され,午後1時から午後4時までの3時間)。

1 試験結果

 センター試験となった行政書士試験の結果の推移は,同センターの発表によれば,次表のとおりです。

試験結果の推移
 12年度13年度 14年度 15年度 16年度 17年度 18年度
申込者数  51,919人 71,366人 78,826人 96,042人 93,923人 89,276人 88,163人
受験者数 44,446人 61,065人 67,040人 81,242人 78,683人 74,762人 70,713人
合格者数 3,558人 6,691人 12,894人 2,345人 4,196人 1,961人 3,385人
合 格 率 8.01% 10.96% 19.23% 2.89% 5.33% 2.62% 4.79%


2 配 点

 科目別の配点は,次のように変更されました。

試験科目
出 題 形 式
出題数
配 点
満 点
法 令 等
択一式
5肢択一
40題
4点
160点
多肢選択式
3題
8点
24点
記述式
40字程度の短文記述
3題
20点
60点
46題
  
244点
一般知識等
択一式
5肢択一式
14題
4点
56点
合   計
60題
 
300点
*択一式または記述式にいずれかに属することになります。


3 合否判定基準

合否判定基準は,次のように変更されました。

 次の要件のいずれも満たした者を合格とする。
 @ 行政書士の業務に関し必要な法令等科目の得点が,122点以上である者。
 A 行政書士の業務に関連する一般知識等科目の得点が,24点以上である者。
 B 試験全体の得点が,180点以上である者。

  • @Aは,いわゆる足切点です。
  • 法令等では5割,一般知識等では4割以上を確保していないと,即不合格となります。
  • そこで,例えば,法令等では,配点の高い多肢選択式+記述式で少なくても42点,一般知識等では24点(6題正解)を確保し,あとは,法令等で120点(30題正解)の確保を目指すことになりましょうか。
  • なお,記述式の採点基準についてセンターに紹介したところ,記述式の採点基準は一切非公開とのことでした。


4 出題の概要

 出題の概要は次表のとおりです。

(1)法令等

科 目択一多肢記述合計配点備  考
基礎法学
2題
  
2題
8点
裁判外紛争処理手続,外国人に関する法制
憲 法
5題
1題
 
6題
28点
私人間効力,国事行為,条文知識,人権判例要旨など
行政法
14題
2題
1題
17題
92点
法理論(3題)・行手法(3題)・行審法(3題)・行訴法(3題)・>国賠法・情報公開法(1題)など
地方自治法
5題
  
5題
20点
事務,条例制定権の限界,直接請求,住民訴訟,地域自治区など
民 法
9題
 
2題
11題
76点
総則(2題)・物権(2題)・契約(3題)・不法行為・親族など
商法・会社法
5題
  
5題
20点
商業使用人・商行為・株主総会・合併・会社の種類など
total
40題
3題
3題
46題
244点
 


(2)一般知識等

科 目択一配点備  考
政治・経済・社会
6題
24点
行政改革・地方自治制度の推移,財政投融資,貿易の自由化,高齢化・小子化現象,海洋
情報通信
2題
8点
ファイル交換ソフト,電子署名法
個人情報保護
3題
12点
通信の秘密と個人情報の保護,個人情報保護法
業務関連知識等
出題なし
文章理解
3題
12点
要旨把握,適語の穴埋め,文章整序
total
14題
56点
 


 出題の内容(法令等)

1 択一式

(1)基礎法学
 2題出題されました(問1.2)。
 このところ,基礎法学は,法源,法の原則,紛争解決制度というように,法制度の横断的な考察を問う問題が出題されていましたが,昨年度の出題もこの傾向に沿うものでした。
 問1は時節柄「ADR」さえ知っていれば正解に達することのできる単純な穴埋め問題でしたが,問2はわが国の外国人法制に関する横断的な知識を問う個数で問う難問でした。

(2)憲法
 6題出題されました(問3〜7,41)。
 人権については,平成17年を除き,著名な判例の要旨を問う問題が3題出題されていましたが,この傾向を踏襲する出題でした。
 問3は最高裁の三菱樹脂事件判決(間接適用説)を知っていれば処理できる問題でしたが,問5は表現の自由に関するいくつかの著名な判例の横断的な理解を問う問題であるのは格別,独自の用語方が用いられていることもあり,すこぶる難問でした(予備校も肢3と5の選択に悩んだハズ)。この問5を除き,問3・4・6・7はいわばサービス問題であり,ゼッタイに落としてはならない問題でした(それにしても問6の作問はお手抜き)。

(3)行政法
 14題出題されました(問8〜20,26)。
 その内容は,基礎理論3題(問8・9・10),行手法3題(問11・12・13),行審法3題(問14・15・16),行訴法3題(問17・18・19),国賠法1題(問20),情報公開法1題(問26)でした。
 基礎理論の公法と私法の交錯に関する問8は,判例知識を問う問題でしたので,判例を知らない人にはきつい問題でしたが,問9・10は,毎年おなじみの型式・内容の問題でした。
 行手法の問11・12も,毎年おなじみの頻出問題でした。意見公募手続に関する問13は新出問題でしたが,出題の予想されるテーマでしたので,合格レベルの人は全問正解に達したものと思われます。
 行審法の問14・15も毎年おなじみの頻出問題でしたが,問16・問17は,不服申立てと取消訴訟の関係を問う新作の問題でした。行訴法については問17のほか,問18・19は平成16年改正に関する平易な知識問題でした。
 国賠法の問20は,判例をベースとして,あちこちに惑わしの文言を配した意地悪な問題でしたので,ミスされた人も多かったように思えます。
 行政機関情報公開法の問26は,よく練られており,たとえ判例を知らなくても同法の制度趣旨を理解している人であれば正解に達することのできる良問でした。

(4)地方自治法
 5題出題されました(問21〜25)。
 その内容は,自治事務と法定受託事務(問21),条例制定権の限界の判例知識(問22),直接請求(問23),住民監査請求と住民訴訟(問24)地域自治区(問25)に関する従来型の知識問題でした。
 このうち,問25は平成16年の法改正により創設された地域自治区の穴埋め問題でした。このように,行政法や地方自治法においては,法改正に関する事項が直ちに出題された点が注目されます。

(5)民法
 9題出題されました(問27〜35)。
 その内容は,総則2題(問27・28),物権2題(問29・30),債権各論4題(問31・32・33・34),親族1題(問35)であり,民法の全分野から出題されましたが,平成17年度のような練られた問題は皆無で,条文知識を問う無難な問題とされ,また債権総論からの出題はありませんでした。

(6)商法・会社法
 5題出題されました(問36〜40)。
 その内容は,商人の商業使用人(問36),商行為の特則(問37),株主総会(問38),合併(問39),会社の種類(問40)であり,総則1題,商行為1題,会社法3題と満遍なく出題され,いずれもよく練られた問題でした。改正商法・新会社法は平成18年5月1日から施行されていますが,総務省告示(行政書士試験の定め)によれば4月1日現在施行法令とされているため,センターにおいてどのような出題がされるかが注目されましたが,つとに私が指摘していたような措置(バックナンバー「U新しい行政書士試験」参照)が採られました。


2 多肢選択式

 突如として,"多肢選択式" なる問題が出題されました(問41〜43の3題)。
 その内容は,憲法1題(違憲審査制の性格),行政法2題(住民訴訟,行政強制)で,空欄4個の穴埋め問題であるところ,下段の枠内にはその4倍の16個もの惑わしの選択肢を加えた20個もの選択肢をを配した何とも意地悪な問題でした。
 まさに不意打ちの出題であり,大方の受験生は,下段の枠内の選択肢の多さに圧倒されたのではないでしょうか。


3 記述式

 かつての「漢字2字」といった神経質な条件を付した漢字の書き取問題から,平成11年暮れの省令改正の担当者であったS自治事務官やG自治事務官が想定されていた短文を記述させる問題が出題されました(問44〜46の3題)。
 その内容は,簡単な事例を設定して,その結論+理由(行政法の問44),要件(民法の問45・46)を,40字程度で記載させるものでした。
 いずれも 典型的な事例であり,ただちに論点を見出すことのできる問題でしたが,初めての出題スタイルでもあり,まとめるのに苦心された人も多かったように思えます。


 出題傾向(一般知識等)

(1)政治・経済・社会
 6題出題されました(問47〜52)。
 その内訳は,政治2題(問47・48),経済(問49・50),社会(問51・52)でした。出題形式も奇抜なものはなく,いずれも素直な出題でしたので,与しやすかったのではないでしょうか。ただ,問47・問51はいささか細かな知識を問う問題でした。

(2)情報通信・個人情報保護
 5題出題されました(問53〜57)。
 その内容は,情報通信2題(問53・54),個人情報保護3題(問55・56・57)でした。
 いずれもT先生ならではの細かな知識を問う問題であり,すぐ後には時間のかかりそうな長文の文章理解が残っているところから,適当な肢を正解肢とした受験生が多かったのではないでしょうか。

(3)文章理解
 3題出題されました(問53〜57)。
 平成12年から,国語の出題を担当されていたS先生が留任されましたので,毎度おなじみのオーソドックスな問題ということになりました。


 総 括

(1)受験申込者の動向
  昨年の「行政書士試験の施行の定め」の改正により,昨年度から行政書士試験は,11月の第2日曜日に実施されることになり,公務員試験や司法試験などの他試験を受験した人も受験しやすくなりましたが,センターのHP上の「試験結果分析資料」によれば,受験申込者数やその属性にも大きな変動はなく,20代の方の受験申込の微減傾向は昨年度もみられたようであり,若い方の行政書士試験離れが気になります。

(2)出題内容
 この点,「より一層法的思考力等を問うこととすべく,その判定になじみやすい基本法を中心に出題法令の限定を行」なって「択一式,記述式を通じ,様々な角度から法的思考力等を問う出題の増加が想定され,所要の回答時間が必要となると考えられる一方,受験者の負担を考慮し,法的思考力等を一層問う等の改正趣旨を達成するために必要な最小限度の時間拡大に留める必要もあることに留意し,試験時間の拡大を30分とし」て行われた最初の試験でした。
 けれども,記述式を含めて従前とさほど遜色のない知識問題中心の出題であり,雑な作問が散見しました(特に行政法・民法)。その原因は,試験委員の先生が急増されたこともあり,一堂に会されての直接の打ち合わせが十分になされなかったことにあるものと推察します。

(3)問題点
 特筆すべきは,法令等においては,所如として"多肢選択式"なる択一式とも記述式ともいえそうな中途半端な問題が出題され,行政書士の業務に関連する一般知識等においては,情報通信・個人情報保護の分野から5題出題されたことです。
 このあたり,思うところがありますので,別途「U 今年の試験を思う」で検討することにします。


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