X 法改正情報

 ご承知のように,行政書士試験の施行に関する定め(総務省告示)によれば,法令等の科目は,「試験を実施する日の属する年度の4月1日現在施行されている法令に関して出題」されることになっていますが,行政書士試験の法令等の試験科目とされている行政手続法の改正法がこの4月1日から施行されることになりましたので,その概要をコメントします。


 行政手続法の改正の概要

 平成17年の法改正(平成17年法律73号)で,行政運営において更に公正の確保と透明性の向上を図るため,行政機関が政策・制度の立案を行おうとする際には,あらかじめその案を公表し,広く国民に意見や情報を求め,提出された意見を考慮して最終的な意思決定をし,その検討結果を公表する手続(いわゆるパブリック・コメント)の制度が創設されました。



 この手続は,「意見公募手続等」として,同法第6章に置かれました(38条〜45条)。そのため従前の第6章(雑則)は,第7章(46条)に繰り下げられたほか,所要の改正が行われました。
 なお,地方公共団体の行政立法については,行政手続法の規定は適用されず(3条2項),当該地方公共団体の条例によることになります(46条)。

*改正後の行政手続法の全条文はテキストファイルとして公開していますので,ご利用ください。


1 制度趣旨

 行政手続とは,広義には行政活動が行われるに当たって執られるすべての手続をいいますが,狭義には事前手続,すなわちある行政活動に先立って一定の手順を踏むことをいいます。

 行政手続法は狭義の事前手続に関する一般法といわれますが,同法が規律するのは,現従前は,@申請に対する処分,A不利益処分,B行政指導,C届出に限られていました。今回の改正で,D意見公募手続等が追加されたことになります。
 この意見公募手続等が追加されることにより,行政手続法の目的である行政運営における公正の確保及び透明性の向上という目的に資することはもとより,行政機関の政策決定の判断の適正の確保,判断の過程への国民の参加の目的にも資すことになります。
 ただ,すべての政策決定に意見提出手続を前置するとすれば,行政の遅延やコスト増を招来し,現実的ではないため,一定の命令等に限定されることになっています(行手法2条8号,3条2項・4項,39条4項)。


2 適用範囲 原則

 命令等を定める行為に適用されます。
 ここに,命令等とは,内閣または国の行政機関が定める次のものをいいます(2条8号)。

(イ)命令・規則
 これらは,行政機関が制定する国民の権利義務に関する法規範であり,行政法学にいう法規命令です。制定権者によって,政令(内閣),内閣府令(内閣総理大臣),省令(各省大臣),外局規則(外国の長)などがあります。

(ロ)審査基準
 申請により求められた許認可等をするかどうかをその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいいます。行政法学にいう行政規則ですが,国民等の権利義務に影響を及ぼすところから,その対象とされました。

(ハ)処分基準
 不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準をいいます。行政法学にいう行政規則ですが,国民等の権利義務に影響を及ぼすところから,その対象とされました。

(ニ)行政指導指針
 同一の行政目的を実現するため一定の条件に該当する複数の者に対し行政指導をしようとするときにこれらの行政指導に共通してその内容となるべき事項をいいます。行政法学にいう行政規則ですが,国民等の権利義務に影響を及ぼすところから,その対象とされました。


3 適用範囲 例外

1 全面適用除外
 次の命令等を定める行為については,その命令等の性質,制定手続の特殊性・技術性の面から全面的に適用されません(3条2項・4項)。

(1)その1

@法律の施行期日について定める政令
A恩赦に関する命令
B命令又は規則を定める行為が処分に該当する場合における当該命令又は規則
C法律の規定に基づき施設,区間,地域その他これらに類するものを指定する命令・規則
D公務員の給与,勤務時間その他の勤務条件について定める命令等
E審査基準,処分基準又は行政指導指針であって,法令の規定により若しくは慣行として,又は命令等を定める機関の判断により公にされるもの以外のもの

(2)その2

@国又は地方公共団体の機関の設置,所掌事務の範囲その他の組織について定める命令等
A皇室典範26条の皇統譜について定める命令等
B公務員の礼式,服制,研修,教育訓練,表彰及び報償並びに公務員の間における競争試験について定める命令等
C国又は地方公共団体の予算,決算及び会計について定める命令等
ただし,入札の参加者の資格,入札保証金その他の国又は地方公共団体の契約の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定める命令等を除く。
D国又は地方公共団体の財産及び物品の管理について定める命令等
ただし,国又は地方公共団体が財産及び物品を貸し付け,交換し,売り払い,譲与し,信託し,若しくは出資の目的とし,又はこれらに私権を設定することについて定める命令等であって,これらの行為の相手方又は相手方になろうとする者に係る事項を定めるものを除く。
E会計検査について定める命令等
F国の機関相互間の関係について定める命令等
G地方自治法第2編第11章に規定する国と普通地方公共団体との関係及び普通地方公共団体相互間の関係その他の国と地方公共団体との関係及び地方公共団体相互間の関係について定める命令等
第1項の規定によりこの法律の規定を適用しないこととされる処分に係る命令等を含む。
H2項各号に規定する法人の役員及び職員,業務の範囲,財務及び会計その他の組織,運営及び管理について定める命令等
ただし,これらの法人に対する処分であって,これらの法人の解散を命じ,若しくは設立に関する認可を取り消す処分又はこれらの法人の役員若しくはこれらの法人の業務に従事する者の解任を命ずる処分に係る命令等を除く。)

2 一部適用除外
 次の場合には,その一部が適用対象外となります(39条4項)。

@公益上,緊急に命令等を定める必要があるため,意見公募手続を実施することが困難であるとき。
A納付すべき金銭について定める法律の制定又は改正により必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法についての命令等その他当該法律の施行に関し必要な事項を定める命令等を定めようとするとき。
B予算の定めるところにより金銭の給付決定を行うために必要となる当該金銭の額の算定の基礎となるべき金額及び率並びに算定方法その他の事項を定める命令等を定めようとするとき。
C法律の規定により,委員会等の議を経て定めることとされている命令等であって,相反する利害を有する者の間の利害の調整を目的として,法律また政令の規定により,これらの者及び公益をそれぞれ代表する委員をもって組織される委員会等において審議を行うこととされているものとして政令で定める命令等を定めようとするとき。
D他の行政機関が意見公募手続を実施して定めた命令等と実質的に同一の命令等を定めようとするとき。
E法律の規定に基づき法令の規定の適用又は準用について必要な技術的読替えを定める命令等を定めようとするとき。
F命令等を定める根拠となる法令の規定の削除に伴い当然必要とされる当該命令等の廃止をしようとするとき。
G他の法令の制定又は改廃に伴い当然必要とされる規定の整理その他の意見公募手続を実施することを要しない軽微な変更として政令で定めるものを内容とする命令等を定めようとするとき。


5 命令等を定める場合の一般原則

 行政手続の一般法としての行政手続法において,念のため次の確認規定が設けられました(38条)。
 この一般原則は,意見公募手続の対象とならない行政立法にも当然適用されます。

@命令等を定める機関は,命令等を定めるに当たっては,当該命令等がこれを定める根拠となる法令の趣旨に適合するものとなるようにしなければなりません(同条1項)。
A命令等制定機関は,命令等を定めた後においても,当該命令等の規定の実施状況,社会経済情勢の変化等を勘案し,必要に応じ,当該命令等の内容について検討を加え,その適正を確保するよう努めなければなりません(同条2項)。


6 意見公募手続

(1)概要
 命令等制定機関は,命令等を定めようとする場合においては,上記適用除外となる命令等の場合を除き,あらかじめ,その命令等の具体的かつ明確な内容の案とその命令を定める根拠となる法令の状況等が明示された関連資料,その他意見の提出先,提出期間等の一定事項を公示し,広く一般の意見や情報を求めなければなりません(39条)。

(2)公示の方法
公示は,主としてインターネットを利用する方法(具体的には電子政府の総合窓口の活用)によって行われます(41条)。

(3)意見提出期間
 意見提出期間は,原則として,公示の日から起算して30日以上でなければなりません(39条3項)。
 ただし,やむを得ない理由があるときは,30日を下回ることもできます。この場合には,案の公示の際その理由を明らかにしなければなりません(40条)。

(4)意見の考慮義務
 命令等制定機関は,意見公募手続を実施して命令等を定める場合には,意見提出期間内に当該命令等制定機関に対し提出された当該命令等の案についての提出意見を十分に考慮しなければなりません(42条)。
 ただし,提出意見に法的拘束力はなく,命令等制定機関の合理的な判断に委ねられることになります。
 なお。考慮とは,考えをめぐらす,よく考えるという意味であり,中央省庁等改革基本法第50条第2項と同じ用語方です。

(5)結果の公示
 命令等制定機関は,意見公募手続を実施して命令等を定めた場合には,その命令等の公布と同時期に,原則として,次の事項を公示しなければなりません(43条1項〜3項)。
  @命令等の題名
  A命令等の案の公示の日
  B提出意見(提出意見がなかったときはその旨)
  C提出意見を考慮した結果とその理由(趣旨)

 なお,命令等制定機関は,意見公募手続を実施したにもかかわらず,命令等を定めないことにしたときは,その旨および一定事項を速やかに公示しなければなりません(同条4項)。



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