U 新試験の出題予想

 ご案内のように,総務省において,「行政書士試験の施行に関する定め」の改正が検討されていましたが,同年6月17日〜7月19日のパブリックコメントを経て,9月30日に「行政書士試験の施行に関する定めの一部を改正する件」が告示され(平成17年総務省告示第1098号),今年の試験から改正内容が適用されることになりました。
 そこで,まず今一度改正内容を確認して,次に対処法等を検討することにします。


1 新試験の要目

 新試験の要目は次のとおりです。


1 総務省によれば,中心とするとは,上記に列挙した「法律を出題の中心とするものの,その時々で重要な行政に関する法令からの出題を妨げないとの趣旨によるもの」であり,したがって,例えば,「行政機関の保有する情報の公開に関する法律については,この分野からの出題が可能」と(総務省回答)。

2 総務省告示は,いずれ「商法および会社法」と改正されるであろうが,改正商法・新会社法の施行は4月1日以降になりそうだから,今年は現行商法・有限会社法の下での出題ということになるも,若干思うところがあるので別途考察。

3 総務省によれば,「削除された法令(行政書士法,戸籍法,住基法,税法,労働法)については,『政治・経済・社会』または『情報通信,個人情報保護』分野において,関連する知識を問う出題がなされうる。」と(総務省の告示改正提案理由中の記述)。



2 出題予想

 総務省は,指定試験機関である財団法人行政書士試験研究センター(以下「センター」)に,その概要を公表するように指導しているようですが(別途資料中の総務省回答45参照),センターとしても,試験委員の選改任を経て,試験委員会議などの手順を必要とすることもあって,現段階では何らの発表もなされていません(風聞によれば,センターでは「サンプル問題」の公開はしない方針だとか...)。
 しかし,これでは,今年の試験を目指して本格的な準備に入ろうとする受験生は困ります。何らの具体的な指針も与えられておらず,フタを空けてみなければわからないという状態の下での受験勉強となるからです。
 そのため,どこの予備校等でもあれこれ苦慮されているものと思われますが,予備校という看板の下では,大胆な予想を公開することはできませんので,その叩き台として,幾多の試験方法の変更の下で,大手予備校でケッコー長く講座の総括を担当してきた経験のもとに,参考までに思うところを述べることにます。
 このような予想を公開するにあたっては,事柄の性質上,細心の注意払ったつもりですが,あくまでも予想は予想ですし,また現在の私は受講料を頂戴しているわけではありませんので,予想が外れても受講料の返還(損害賠償)というものはありません。
 どうか,話半分として,納得いただける部分だけを自己責任の下で取り入れてください



 1 科目別出題数の予想

 別途紹介しました総務省の考え方や平成12年〜17年の出題傾向(過半の試験委員の先生は留任?)等を総合考慮して,科目別出題数を次のように予想します。




★ 若干の補充説明

1 法令等

 法令等では,記述式が大きく変わり,今までよりも大部なものとなることが予想されます。
 法令等の出題数は46題とされていますので,仮に記述式が大部なものとなれば,その出題数は少なくなり,択一式の出題が多くなります。事柄の性質上,具体的な出題数の確証などはないのですが,試験時間や受験生の標準的な筆記能力等を勘案して,記述式3〜5題,択一式43〜41題(キリのよいところで,記述式4題,択一式42題?)と予想します。

(1) 記述式
 記述式が大きく変わりそうなことの根拠は,次のとおりです。
 記述式は平成12年からのセンター試験において,従前の800字以内で書く社会的教養論文に代わるものとして導入されたものですが,昨年までのセンター試験では,当初の自治省の意向にもかかわらず(自治省は当初1題あたり30字程度の短文を予定),ひとり採点の公平〜便宜が優先され,配点は択一式の3倍の6点とされつつも,空欄1〜2個の単なる漢字の書取的な問題にとどまり,行政書士試験の権威を著しく失墜させていたからです(別途資料中の総務省への意見参照)。

 新試験においては,試験時間も30分延長されましたし,1題につき100字程度,全体として400字程度の記述を求めることは十分に可能であり,これにより,総務省のいう「様々な角度から理解力,思考力をより一層問う」ことも可能になります。

 けれども,採点手続上の難点があります。
 例えば,ある事例を設定して「その結論と理由を100字以内で述べよ」,とか「○○について知るところを100字以内で述べよ」とするような出題では,多様な記述が予定されるところから,その採点を事務スタッフに委ねることはできず,試験委員の先生が直接担当されるほかないことになりますが,都道府県知事に最終決済を求める手続等を考慮しますと,記述式の採点は年末の何かと忙しい12月中に終了しなければならないことになってしまうからです。
 それに,今年から行政書士試験は法職の資格試験としては最後に実施されることになりますので,公務員試験や司法試験などの他試験を受験した人も受験しやすくなるため,受験生も大幅に増加することが見込まれ,記述式の採点はますます大変になりそうです。

 上記の難点は,試験委員の先生を大幅に増員することで解決できますが,実際問題としてはセンターの予算の関係もあり,それにも限界がありましょう。

 あれやこれやを考察しますと,せいぜい50字程度にとどめた上で採点対象者を大幅に絞り込むか,あるいは従前のような10文字程度の穴埋め問題を踏襲し,採点は事務スタッフに委ねるも,問題文を今までよりも長文化して空欄の数を多くするという手法しかないように思えます。
 その場合,どちらの手法となるのでしょうか。おそらく後者だと思われます(その方が採点処理上は無難)。
 このように,記述式の出題予想はすこぶる難しいです(すみません)。

(2) 択一式
 科目別の出題配分は,基礎法学2題,憲法10題,行政法14±1題,民法12題,商法5±1題と予想します。
 このうち,民法は倍増の12題を予想しましたが,それは,平成12年の4題が昨年は6題となってことからもわかりますように,民法は古来「法律の中の法律」といわれ,民法には法律学のエキスがたくさん詰まっており,総務省の求める「より一層法的思考力等を問うこととすべく,その判定になじみやすい」科目であることを理由とします。

 行政法と商法の出題数は,記述式の出題数や出題を担当される試験委員の先生方の相関関係によって決まるものと思われますが,現段階では,試験委員の先生が発表されていませんので(商法の先生も新たに数名任命されるはず),上記のような予想になりました。

2 一般知識等
 科目別の出題配分は,政治・経済・社会・情報通信がそれぞれ2題,個人情報保護1題,文章理解3題,その他2題と予想します。

 総務省告示には,「その他」の科目はないのですが,総務省の告示改正の提案理由中に,「行政書士の業務に関し必要な法令等から『行政書士法(行政書士法施行規則を含む。)』『戸籍法』『住民基本台帳法』『労働法』及び『税法』を削除する。(ただし、これらについては、『政治・経済・社会』又は『情報通信・個人情報保護』分野において、関連する知識を問う出題がなされうる。)」とありますので,便宜「その他」の科目欄を設けたものです。


 2 法令等の出題予想と対策

(1) 基礎法学
 この科目はもともと「法学概論」として出題されていたのですが,平成11年末の自治省告示により「基礎法学」に改称されたものです(当時の自治省担当者によれば,単なる名称の変更と解されたら足りるとのことでした)。
 ともあれ,この科目は,出題者がその気になれば,例えば昨年のように刑法各論の論点もこの程度は「基礎」の範疇に入るということになりがちであり,その名称にもかかわらず,実は大変な科目です。
 かつては,法源・法の原則・法令用語等を問う出題が多かったのですが,次第に,紛争解決制度(H15),法人の設立主義(H16),裁判制度・情報保護に関する法制(H17)といった具合に,法制度の横断的な知識を問う問題が出題されるようになりました。この傾向は今年も踏襲されるでしょう。
 このように,ポイントの絞りにくい科目ですから,まずはお手元の基礎法学のテキストを一読して憲法等の学習に入り,仕上げは全法令科目が終わってから,という手法がよいでしょう。

(2) 憲 法
 一般的な傾向としては,人権については著名な判例の要旨,統治については条文知識が問われる傾向にありますので,人権については判例,統治については条文を大切にしてください。
 ただ,判例については従前のように単に判例の結論を問う知識問題だけではなく,その法的構成を問う論理問題も出題されるようになりましたので(例:H16-7,H17-4),判例を個別に暗記する前に,テキストをしっかり学習する必要があります。
 また統治についても従前はまったく出題されていなかった憲法保障の分野からも出題されるようになりましたので(H17-41),ここでも条文を暗記するだけではなく,その意味するところをテキストでしっかり学習する必要があります。
 大方の予備校のテキストもこのあたり大幅な増補が行われたものと思われますが,できれば然るべき学者の手による然るべき概説書を参考書として併用されることをおすすめします。

(3) 行政法
 出題数・試験委員の数からしても,この試験の最重要科目です。
 今年から,「行政法(行政法の一般的な法理論,行政手続法,行政不服審査法,行政事件訴訟法,国家賠償法及び地方自治法を中心とする。)」とすることされましたが,つまるところ,出題範囲は従前と同じです。
 かつては,行政機関の保有する情報の公開に関する法律(情報公開法)がこの科目から出題されていましたが,「中心とする」という文言から,例えば,行政機関の保有する個人情報の保護に関する法律(行政機関個人情報保護法)も,この科目から出題されうることになるからです(総務省同旨)。
 多岐にわたり出題されますが,新旧学説の乱立する行政法総論に深入りすることなく,まずは,条文のある行政代執行法,行政不服審査法,行政事件訴訟法,行政手続法,国家賠償法で確実に点数を稼げるようになることが大切です。
 なお,行政法は憲法を具体化した法体系ですから,行政法を学習する際には憲法の原理原則から考えるようにしてください。
 最後に,行政手続法の改正法は,この4月1日から施行されることになりましたので(平成18年2月3日 平成18年政令第17号),パブリックコメント等に関する規定は今年の試験範囲に含まれることになります。この点ご注意ください。

(4) 民 法
 今年から出題数は倍増するでしょう。
 従前のように民法は大いに妥協し,2〜3題正解できれば十分とするわけにはいかなくなりました。本腰を据えて準備する必要があります。
 古来,民法は「法律の中の法律」であって「民法を征する者は法律を征する」といわれてきました。間口は広く奥行きの深い法分野であり,一通り民法がわかるようになるには,少なくとも3年はかかるともいわれてきました。
 もちろん,行政書士試験の場合,そこまでのレベルは要求されないでしょうが,昨年の問24〜29のような問題(それにしても昨年の民法の択一問題は全問がよく練られたすばらしい問題でした)が今年からそのほぼ2倍も出題されるのです。もはや丸暗記の本で済ますことはできません。きちんと制度趣旨から説明した本をテキストとして,じっくり取り組まれる必要があります。
 予備校等の答練問題は,おそらく昭和50年代の司法試験や最近の司法書士試験等を範として作成されることになりましょう。とても並の予備校講師等には作問できそうにない練られた問題が揃っているからです。古本屋さんでこれらの問題集を入手され問題練習されるのもよいでしょう
 ところで,私の指導経験によれば,民法は最初オッカナビックリで解いているときは,誰でもある程度得点できるのですが,少し慣れて考えることができるようになると,かえって得点できないようになってしまいます。誰しも気落ちしてしまいがちですが,それはあなたの理解がまだまだ不十分だからです。ですから,そのときは必ずテキストや条文に戻ってください。この繰り返しによって本物の実力が涵養されていきます。
 最後に,一昨年から民法典は口語化され,読みやすくなりましたので,普段の学習において,テキストや問題集の解説で引用される条文は,面倒でも必ず当たってください。これにより大部な民法を条文で一通り仕上げることができます。

(5) 商 法
 ご案内のように,現行商法典・有限会社法等はこの5月に廃止され,新商法・新会社法が施行される運びになっています。
 ところが,総務省告示(行政書士試験の施行に関する定め)によれば,法令等の科目は,4月1日現在施行されている法令に基づいて出題されることになっていますので,現行商法典から出題されることになります。
 新会社法においては,抜本的な改正がなされているにもかかわらず,わずか1か月後には廃止される現行法を,全受験生が延々11月まで学習しなければならないことの非合理性については,出題者も十分に認識されているはずですから,現行商法典第2編(会社)に特有の事項ではなく,新旧の両法に共通する事柄が出題されるものと解します(新会社法で学習しても構わない!)。
 とはいえ,受験生心理としては,そうはいかないでしょうし,また受験対策としても,過去問をベースとし,現行商法典について説かれている本をテキストとして学習された方が得策です(特に昨年受験された方)。新会社法では大幅に定款自治が認められた結果,ケッコー複雑な規定となっているからです。



 3 一般知識等の出題予想と対策

 総務省告示により,従前の「一般教養」は,「行政書士の業務に関連する一般知識等(政治・経済・社会、情報通信・個人情報保護,文章理解)」と改められましたが,他面,総務省によれば,削除された法令科目(行政書士法,戸籍法,住民基本台帳法,労働法及び税法)については,「政治・経済・社会又は情報通信・個人情報保護分野において,関連する知識を問う出題がなされうる。」とのことですから,この一般知識等は,フタを空けてみなければわからない科目になってしまいました。

(1) 政治・経済・社会
 行政書士の業務に関連する一般知識等としての政治・経済・社会ということになりましたので,これからは,昨年の例でいえば,問47・48のような純粋な知識問題は出題されず,問51・53のような時事的要素の強い問題が出題されることになりましょう。
 他方,総務省によれば削除された法令科目がこの分野から出題されうるとのことですから,例えば,戸籍法や住基法に関連する職務請求書の規制,裁判員制度,ADR法をめぐる最近の動向などが出題されるのでしょうか。
 そのほか,行政書士たる以上,これだけは知っておいてもらいたいとして従前型の社会のしくみに関する問題や企業会計もこの分野からも出題されるのでしょうか。
 それとも,列挙した問題のいずれもが出題されるのでしょうか。
 以上の次第でズバリを予想することはできません。いずれにしても,時事用語辞典だけで済ませることはできず,高校の政経の復習+新聞の閲読は必須のように思えます。
 最後に,法令等科目から削除された行政書士法については,一通り条文にも目を通しておいてください。総務省によれば,この分野からは条文解釈の問題としては出題できないとのことですが,何たって同法は行政書士の憲法(=基本法)なのですから。

(2) 情報通信
 法令等の科目としてではなく,行政書士の業務に関連する一般知識等として出題されるわけですから,従前とほぼ同様の問題が出題されるものと思われ,時事用語辞典で済ますこともできそうです。
 ただし,電子署名法,電気通信法,電子消費契約契約等民法特例法,住基法第4章の2(住基ネット),プロバイダ責任法等の関連法については,六法にあたり,その概要だけは押さえておきたいところです。

(3) 個人情報保護
 情報通信と同様,法令等の科目としてではなく,一般知識として出題されるわけですから,個人情報保護法の詳しい内容が問われることはないでしょうが,同法は個人情報保護に関する基本法ですから,その前提としてその概要だけはきちんと押さえておく必要があります。

(4) 文章理解
 今年から,純然たる国語の科目は廃止され,文章理解として出題されることになりますが,それがどのようなものになるのかは,出題者(試験委員)として,どのような先生が選任されるかによることになります。
 仮に,従前の国語の鈴木先生が留任されるとなれば,従前型の問題(ただし,小説を素材とする問題はないはず),そうではなく,法令等の先生が兼任されるのであれば,論文の一節とか,白書や未知の法案の提案理由などの資料考察,あるいは未知の条文の解釈問題などが出題されことになりましょう。
 いずれにしても,国語は今までの文章生活に大きく左右される科目であり,国語の得意な人は特に受験対策を考える必要はありませんが,そうでない人は何らかの対策を必要とします。対策といえば当初から解法テクニックを追及しがちですが,テクニックだけでは本試験で及第点を確保することはできませんので,その前に中学や高校現代文の補習用の教材で準備体操をされることをおすすめします。



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