T 平成17年度試験の分析

はじめに
 ご案内のように,行政書士試験は今年から大きく変わることになりました。そのような中,昨年度の本試験の出題傾向を分析しても意味はないとされる方もおられるでしょうが,昨年度の試験問題は試験の見直し論議が本格化した中で作問されましたし,また試験委員の先生もその過半の方が留任されるでしょうから,今年度の試験の合格を目指す者としては,今年も出題される科目については,その出題の概要を把握した上で本格的な準備に入るべきではないでしょうか。以下,参考までに昨年度の試験を概観することにします。


T 平成17年度の試験の概要

1 試験日時

 平成17年度の行政書士試験は,10月23日,全国60の会場で実施されました(試験時間は午後1時から午後3時30分までの150分)。

2 試験結果

 センター試験となった行政書士試験の結果の推移は,同センターの発表によれば,次表のとおりです。

 
試験結果の推移
  平成12年度 平成13年度 平成14年度 平成15年度 平成16年度 平成17年度
申込者数 51,919人 71,366人 78,826人 96,042人 93,923人 89,276人
受験者数 44,446人 61,065人 67,040人 81,242人 78,683人 74,762人
合格者数 3,558人 6,691人 12,894人 2,345人 4,196人1,960人
合 格 率 8.01% 10.96% 19.23% 2.89% 5.33% 2.62%


3 出題の概要

 出題の概要は次表のとおりです。

※表中の*欄は,私の指導経験に基づく難易ランクで,Aは合格レベルの者なら7割以上正解に達する問題,Bは同5割程度,Cは同2割程度を意味します。
法  令  等
No. 科 目 内     容 実  質 形  式 *
問1 基礎法学 裁判に関する横断的知識 知識 正誤個数 C
問2 基礎法学 情報と法 知識 正誤 B
問3 憲法 憲法条文を変形を素材とした知識問題 条文知識 正誤 A
問4 憲法 判例要旨(戸別訪問禁止規定の合憲性) 論理 異質意見 C
問5 憲法 国会の議事運営 条文知識 正誤 A
問6 憲法 身分保障 条文知識 正誤 A
問7 憲法 資格争訟・選挙訴訟 条文知識 組合せ A
問8 行組法 命令等の発布権者 条文知識 正誤組合せ A
問9 行手法 行政指導 条文知識 正誤個数 B
問10 行手法 申請に対する処分 条文知識 個数 B
問11 行手法 聴聞手続 条文知識 正誤 A
問12 行政代執行法 代執行全般 条文知識 正誤 A
問13 国賠法 1条責任の判例知識 判例知識 正誤個数 B
問14 行審法 不服申立ての対象 条文知識 組合せ A
問15 行審法 不作為に対する不服申立て 条文知識 正誤組合せ A
問16 行訴法 平成16年法改正の概要 知識 正誤 B
問17 自治法 地方議会 知識 正誤 A
問18 自治法 監査 条文知識 正誤 B
問19 自治法 公の施設 条文知識 正誤個数 B
問20 税法 事業所得の必要経費 知識 正誤 B
問21 税法 所得分類 知識 正誤 B
問22 書士法 行政書士の業務 条文知識 正誤 A
問23 書士法 行政書士法人に対する懲戒 条文知識 正誤 A
問24 民法 制限行為能力者制度 条文知識 正誤個数 A
問25 民法 177条の第三者に関する判例理論 判例知識 正誤 B
問26 民法 即時取得の可能性 条文知識 正誤個数 A
問27 民法 債権者代位権に関する判例知識 判例知識 正誤組合せ B
問28 民法 贈与契約に関する判例知識 判例知識 正誤 B
問29 民法 遺留分減殺請求権の関する判例知識 判例知識 正誤 B
問30 戸籍法 家庭裁判所の許可を要する届出 条文知識 正誤個数 A
問31 住基法 閲覧等の請求項 条文知識 正誤 A
問32 商法 株式会社の設立 条文知識 正誤組合せ A
問33 商法 株式会社の取締役 条文知識 正誤 A
問34 商法 商法上の営業等 条文知識 正誤 A
問35 労組法 労働協約 条文知識 正誤 A
問36 憲法 審査基準 知識 空欄2個の穴埋め C
問37 行政争訟 行政審判 知識 空欄2個の穴埋め B
問38 行政訴訟 職権主義と当事者主義に補充 知識 空欄2個の穴埋め B
問39 自治法 国と地方の役割分担 知識 空欄2個の穴埋め A
問40 民法 消費貸借の要物性 知識 空欄2個の穴埋め A



一 般 教 養
No. 科 目 内     容 実  質 形  式 *
問41 国語 漢字 漢字知識 正誤個数 A
問42 国語 外来語の言い替え 時事知識 正誤個数 A
問43 国語 漢字 漢字知識 正誤組合せ A
問44 国語 文法 助詞「に」と「で」の使い分け 正誤組合せ A
問45 国語 文章理解 文中の空欄に入る語 正誤組合せ A
問46 国語 文章理解 趣旨把握 正誤個数 B
問47 国際政治 キューバ・ミサイル危機前後の関連事件 知識 正誤組合せ B
問48 政治 議院内閣制 知識 正誤 A
問49 経済 公債 知識 正誤 A
問50 経済 中央銀行の役割 知識 正誤組合せ B
問51 経済 国民の公的負担の動向 時事知識 正誤 B
問52 経済 企業会計原則による会計処理 知識 正誤 B
問53 社会 次世代育成支援対策法 時事知識 正誤 B
問54 社会 地球環境 知識 正誤組合せ A
問55 情報通信 個人情報保護法 時事知識 正誤個数 B
問56 情報通信 迷惑メール防止法 時事知識 正誤 A
問57 情報通信 インターネットに関する用語 知識 正誤 A
問58 地学 地震 知識 正誤組合せ A
問59 数学 不等式による事例問題 計算 正誤 B
問60 数学 台形と円の面積計算 計算 正誤 B


4 総 括

(1)全 般
 まず,総ページ数が一昨年より4ページ増加し42ページとなり,問題文が長文化しました。
 そして,そのレベルは,上記3に示しましたように,法令等は記述式を含めてAランク22題,Bランク15題,Cランク3題,一般教養はAランク11題,Bランク9題,Cランク0題でしたので,昨年度の試験は平成15年度の場合と同様に,法令等で失敗された人が多かった結果,合格率も大幅に低下したものと思われます。
 たしかに,昨年度の法令等は,B・Cランクの問題が多かったのですが,それでも2,000人もの人が合格されています。これらの合格者は,Aランクの問題をきちんと処理されていたものと思われます。それにより,たといB・Cランクの問題が全滅であったとしても,バッチリ合格できる試験だったからです。惜しくも失敗された方は,このあたりを徹底的に追及された上で今年を目指してください。すると今年の合格は間違いないはずです。

(2)法令等
 まず,択一式の問題配分は,民法の出題が1題増えて6題となり,行政書士法が1題減の2題の出題でした。
 次に,出題形式面では40題中,個数問題6題,組合せ問題7題,論理問題1題,単純な正誤問題26題でした。
 そして,内容面では、論理問題はわずか1題にすぎず,再び平成15年度のように細かな知識を問う問題が激増しました。本試験問題の作成直前,にわかに試験改革の動きが本格化したこともあって,無難な知識問題中心の出題になったように思われます。
 なお,記述式の5題は従来型の単なる漢字の書取問題でしたが,さすがに石川先生は四文字熟語的なものから脱却されました(問36)。もっとも,公務員試験等では格別,行政書士試験では出題されたことのなかった審査基準,行政審判等に関する用語が出題されたこともあり,大方の受験生にとって記述式は法令等の得点源とはならず,法令等で苦杯をなめられた方が多かったものと思われます。

(3)一般教養
 科目別の問題配分は,例年通り,国語6題,社会科学系11題,自然科学系3題でした。
 出題形式面では20題中,個数問題4題,組合せ問題7題,単純な正誤問題9題で,個数問題と組合せ問題が激増しました(特に国語の6題は全問がこの種の出題形式)。
 内容面については,問46,問50を除いて,例年になく素直な問題であり,組みしやすかったものと思われます。


U 傾向の分析(択一式)

1 法令等

(1)基礎法学
 2題出題されました(問1.2)。
 問1は裁判制度,問2は情報保護に関する問題でした。
 このところ,問1は法源,法の原則から,問2は紛争解決制度(H15),法人の設立主義(H16)のように,法制度の横断的な考察を問う問題が出題されていましたが,昨年度の出題もこの傾向に沿うものでした。
 けれども,問1は裁判所法などの細かな知識を個数で問う問題であり(特にイ・オ),受験生には酷にすぎる問題でした。また,情報窃盗(問2肢2)は刑法各論の論点であり,管理可能性説から情報も財物に該当するとする有力説があるにもかかわらず,これを正解肢とするもので,不適切な出題であるといわざるをえません。
 いずれにしても,問1から順に解く受験生は出はなをくじかれたものと思われます。

(2)憲法
 5題出題されました(問3〜7)。
 このところ人権については著名な判例の要旨を問う問題が3題出題されていましたが,昨年は問4の1題だけで他の4題は統治に関する条文知識を問うものでした。
 このうち,問3は石川先生ならではの架空の条文を素材とするもので,一昨年(H1603)と同様の手法による作問であり,軽く処理されたものと思われます。
 問4は反対意見ではなく,補足意見のうち異なる視点からの法的構成を選択させるもので,肢3にヒントがおかれてはいましたが,レベルの高い問題でした。本問は今年からの試験の布石として出題されたものと思われます。
 なお,問5〜7はいわばサービス問題であり(それにしても肢の数合わせのための問6(2)の作問はお粗末),ゼッタイに落としてはならない問題でした。

(4)行政法
 3題出題されました(問8・13・14)。
 行政法といっても,情報公開法,行手法,行審法,地方自治法を別途に分類すれば,この科目の対象となるのは,行政法総論,行政組織法,公物法,行政代執行法,国賠法,行訴法ですが,この分野からは,行政組織法(問8),行政代執行法(問12),国賠法(問13),行訴法(問16)の4題が出題されました。
 問8,問12は平易,問16は当初から出題の予想されている知識でしたので,落としてはならない問題でしたが,問13は細かな判例知識を問う個数問題でしたので,落とされても仕方のない問題といえましょう。

(5)行手法
 3題出題されました(問9〜11)。
 試験委員の先生もこの科目の作問には毎年苦慮されているようで,昨年もまた過去問を焼き直したものにすぎませんでした。すなわち,3題中2題を個数問題(問9・問11)とし,問題文を長文化したり(問9),目新しい知識を1つだけ配する(問10・問11)というオーソドックスなものでしたので,合格レベルの人は全問正解に達したものと思われます。
 なお,問10の(ウ)は大方の予備校の教材には取り上げられていない知識であり,かつ個数問題でしたので,苦心された方も少なくなかったようですが,本肢は制度趣旨から素直に○とされるべき肢です。

(7)行審法
 2題出題されました(問14・15)。
 この科目も行手法と同様,試験委員の先生も出題に苦慮されているようで,過去問を焼き直して組合せ問題にした平易な問題でしたので,合格レベルの人は全問正解に達したものと思われます。

(8)自治法
 3題出題されました(問17〜19)。
 地方議会に関する問17の(5)は,もっともらしい理由前置のヒッカケが用いられていましたので,思わず本肢を○とされてしまった人が多かったのではないでしょうか。問18・19はデタラメの記述を織り込みながら細かな知識を問うもので多くの人が苦心されたものと思われます。もっとも問18の正解肢は誰でも知っているはずのものとされていました。

(9)税法
 2題出題されました(問20・21)。
 必要経費を事例形式で問う問題(問20),所得税法上の所得分類を事例形式で問う問題(問21で,一昨年と同様の手法による出題でした。
 内容的にもそれほど難しいものではなく,行政書士を志す人ならそのたしなみとして知っておいてもらいたいという日常的な知識を問う問題でしたので,合格レベルの人は全問正解に達したものと思われます。

(10)書士法
 2題出題されました(問22・23)。
 業務(問22),行政書士法人に対する懲戒(問23)が出題されました。問22は毎年おなじみの問題でしたが,問23は法改正に伴う新出の問題にして,懲戒というマイナーな分野からの出題でしたので,ミスされた人もあったのではないでしょうか。
 なお,自治省顧問として平成11年度の行政書士法の改正を諮問され,平成12年度からのセンター試験の試験委員長であられた兼子仁先生の試験委員退任後は,この試験における行政書士法の比重は低下する一方で,4題から3題となり,昨年は2題の出題となり,今年度から法令等の問題としては出題されないことになりました。

(11)民法
 6題出題されました(問24〜29)。
 平成12年〜15年度は4題,16年度は5題,17年度は6題の出題となり,この試験における民法の比重が高まっています。今年度からはさらに出題が増えることになります。
 さて,昨年度の民法の問題はいずれもよく練られた良問で,しかも,総則(問24),物権(問25・26),債権総論(問27),債権各論(問28),相続(問29)と民法の全分野から出題されました。
 このうち,問24・26は個数問題でしたが,いずれも素直な問題でしたので合格レベルの人は正解に達したものと思われます。
ただ,残る4題は判例の知識を前提とする問題でしたので,ミスされた人も多かったのではないでしょうか。

(12)戸籍法
 1題出題されました(問30)。
 届出に際し家庭裁判所の許可を要するものを選択させる個数問題でしたが,いわば毎度おなじみの典型的な知識を問うものでした。

(13)住基法
 1題出題されました(問31)。
 住民票の写しの等の交付請求に関するやや細かな知識を問う問題でしたが,戸籍の附票は誰でも容易に請求できることを押さえていれば軽く正解に達することのできる問題でした。

(14)商法
 3題出題されました(問32〜34)。
 その内訳は,会社法2題,商行為法1題で,いずれも誤った記述を指摘させるものでした。 問32は株式会社の設立に関する細かな知識を問う問題でしたが、組合せ問題でしたので、エをヒントに正解肢を2か3に絞ることができ、合格レベルの人は全員正解に達したものと思われます。
 問33も細かな知識を問うものでしたが、5は明らかに現行商法の下では取締役会の趣旨に反するところから,これを正解肢とすることができます。
 なお,問34はマイナーな商行為からの出題でしたが、この程度のことは当然に押さえておくべき基本問題です。

(16)労働法
 1題出題されました(問35)。
 しばらくぶりに労組法からの出題で,本問も労働協約に関する誤った記述を問う問題でした。正解肢の4は,労組法17条の条文をそのまま用いて,条文中の「同種」を「異種」に変えて誤った記述とする典型的なお手抜き作問でした。

2 一般教養

(1)国語
 6題出題されました(問41〜46)。
 その内訳は,漢字2題(問41・43),外来語1題(問42),文法1題(問44),文章理解2題(問45・46)でした。出題形式も奇抜なものはなく,いずれも例年になく素直な出題でしたので,組みしやすかったのではないでしょうか。
 もっとも,問46は個数問題でしたので,苦慮された人も多かったように思われますが,本文を素直に読めば,本文中には,アの公開による問題点の指摘はなく,ウの公文書の虚偽性に言及した記述はなく,エお私文書の意義の低下は,「それと全く反対」とあるところから,これらが本文の趣旨と合っていないことがわかります。
 それはともあれ,今年から文章理解は一般知識等の科目として出題されることになりましたが,やはりこの科目は国語の先生が出題されるのでしょうか。もしそうだとすれば問題文はこの種のエッセーが中心となるのでしょうね。気になるところです(別途考察)。

(2)社会科学系
 11題出題されました(問47〜57)。
 その内訳は,私の分類によれば,国際関係1題(問47),政治1題(問48),財政2題(問49・51),経済2題(問50・52),社会1題(問53),国際1題環境1題(問54),情報通信3題(問55・56・57)でした。
 そのうち,時事的要素の強いものは1題(問53)にとどまり,社会の冒頭にあえてあのような形式で配された問47を除いて(本問で時間をロスされた人も少なくないはず),毎度おなじみの知識を問う問題でしたので,組みしやすかったものと思われます。

(3)自然科学系
 3題出題されました(問58〜59)。
 内訳は,マグニチュードの意義を問う問題(問58),不等式を使用する金銭の配分の問題(問59),台形と円の面積を計算させる問題(問60)でした。こられの3題は一昨年とまったく同様の手法による作問であり,少なくとも問58は過半の人が正解に達したものと思われます。


V 傾向の分析(記述式)

問36:憲法
 例により,空欄2箇所の穴埋め問題でしたが,条件は「漢字○字」ではなく「○字以内」として出題されました。至当と思われます(単なる「漢字○字」の漢字の書き取り型では多様な法律概念を問うことはできない。)。
 さて,本問は,下線部に説明されている確立した「法理」の名称を書かせるものでしたが,今まで行政書士試験ではこの種の法理の名称を問う問題は出題されていなかったこともあり,行政書士試験のほどんどの参考書には取り上げられていないため,多くの人が度肝を抜かれたのではないところではないでしょうか。仕方のないところです。本問は,まさに今年からの試験への布石として出題された問題ともいえましょう。


問37:行政法
 行政審判からの出題でした。行政審判は公務員試験にはしばしば出題されていますが,行政試験にはまったく出題されていなかったこともあり,問36と同様に行政書士試験のほとんどの参考書には取り上げられていませんので,多くの人が対処できなかったのではないでしょうか。
 なお空欄Bは,司法権の独立との関係で憲法で論じられる典型的な論点です。

問38:行審法・行訴法
 空欄Aは行審法,空欄Bは行訴法から行政争訟の基本的な視座を問う問題でした。
 空欄Aは,空欄の前の例示,空欄の後の説明から,「職権主義」等を入れることができますが,空欄Bは民事訴訟を学習している人を除いて,改正行訴法の骨子を知っていなければ処理できない問題でした。結局,昨年は改正行訴法に関しては,択一式(問16),記述式(本問)の双方で出題されたことになります。

問39:自治法
 自治法からの出題でした。内容は地方自治法の条文の穴埋めにすぎなかったので,本問はゼッタイに落としてはならないでした(一字一句条文を覚えていなくても,空欄前後の記述から適語を推認することができる)。

問40:民法
 択一式はハイレベルの問題が数多く出題されたところ,記述式は誰でも知っているはずの基本的な論点について,空欄の前後に親切なヒントを付し,サービス問題として出題されていました。本問もゼッタイに落としてはならない問題でした。


 最後に,
 今年の記述式は,どのような形式でどのような論点について出題されるのかは定かでありませんが,少なくとも,問39・40のような形式で出題されることはないでしょう(別途第U部で考察)。



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